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「俺よりもコウがね、悩んで苦しんでた。俺の両親に話した時には、俺はもう医者になって働いて、一人前の社会人になっていたっていうのに、コウは自分が年上ってことで、責任を感じていたんだ。俺はそれに気づいていなかった。俺とコウが持つ苦しみは同じものだと思っていた。その頃同性婚のニュースを見て、コウは養子縁組ではなくてこれにしようって言い出した」
僕たちが同性婚と言っているのは、区の同性パートナーシップ条例のことだった。同性婚と言ってはいるが、権利面等からみて、中身は異性との結婚とは程遠いものだった。
「養子にしろ、同性婚にしろ、病院に報告しないわけにはいかないし、そうなれば俺もコウも立場はなくなる。だったら、コウの家……診療所なんだけど、そこを継ぐっていう名目で養子になった方が世間的にもいいと思った。まだまだ制度として不完全なパートナーシップ制度をわざわざ利用することもないって、俺は思ったし」
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