第四章

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   ◇  翌日、僕はおじさんの退院の時間に合わせて病院に行った。手続きはすでに済ませていて、荷物も大きめのトートバッグにまとめられていた。  椅子に腰掛けていたおじさんは、僕が部屋に入ると立ち上がった。今日は調子が良いようだ。顔色が良い。 「家帰るんだから、わざわざ病院に来なくてもよかったのに」 「途中で倒れたりしたらどうするんですか」 「急にぶっ倒れたりはねぇよ。多分」 「ほら、多分でしょ」  苦笑したおじさんは、先に部屋を出る。その後に続く僕は、忘れ物がないかもう一度確認しようと振り返った。  綺麗に畳まれた毛布。皺のないシーツ。がらんとした静かな部屋。二週間ほど過ごした個室は、すでにおじさんのいた形跡はない。  こんなふうに簡単に片付けられてしまうものなのかと、背中がぞくりとした。
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