第四章

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「凪? どうした? なんか忘れもんあった?」 「……別に。大丈夫。何もないよ。荷物持ちますよ」 「ありがと。でも平気だよ。着替えは途中からレンタル寝衣使ってたから下着しかないし、何も重たいもん入ってねえから」  今日は柊平は休みだった。おじさんがスタッフステーションに軽く声をかけると、そこにいた何人かの看護師が「お大事に」と返した。僕はそれに会釈し、病院を出た。 「外はあっちいなー!」  外に出たおじさんは軽く伸びをして、ゆっくりと歩き出す。僕も隣に並ぶ。こうして隣を歩くのは久しぶりだ。  病院の前の大通りで、タクシーを拾って帰った。  久しぶりに帰ったおじさんの家は、ずっと閉め切りだった所為か空気が湿気を多く含んでいるように重かった。窓を開けて換気する。
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