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「しばらくはあっちいけどこのままだな。ここ、こんな湿気多かったんだなあ」
「日当たりも悪いし……おじさん、どうしてここにしたんです? 病院の近くだって、他にもっといい家あるでしょう?」
家賃を気にしているように思えない。病院のあの個室は、有料個室だったし。
「まあ、いろいろあんのよ。もう少しここにいられたらわかるからさ、話すよ。その前に死んじまったら笑えるけど」
「はは……」
僕は微かに笑いを返して、ベランダに出る。この辺りは高い建物がないから、五階のおじさんの部屋からでも見晴らしはよかった。といっても、見るべきような景色もない住宅街なのだが。
じりじりと暑い夏の日差し。おじさんの言葉を聞いて寒くなった僕を、温めてくれる。
───逃げるな。無理に笑うんじゃなくて、そういうこと言うなって、言えよ。
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