第四章

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 軽く溜息を吐きながら苦笑するおじさんから、目を逸らす。手すりを握り締める。  震えるな。ぶつけてしまえ。 「夏彦さん」  僕の硬い声音に、また何か感じたのだろう。おじさんは少し僕から離れた。 「ほら、また上がるぞ。話すのは後でなー。今は花火をさあ。それにしても、他の人もここに上がってくればいいのにな。普段屋上閉まってるから、皆開いてること知らねえんだろうな」 「夏彦さん」 「俺はここの大家と知り合いでさあ」  誤魔化すようにまたビールに口を付けようとしたおじさんの手から、缶を取り上げる。地面に置いてから立ち上がり、おじさんを見据えた。 「夏彦」  僕より高い位置にある頭を近づけるために、襟元を掴んで引き寄せた。  かさついた薄い唇に、僕はキスをした。 「何度逃げようとしたって、無駄ですよ。いくら避けられたって、僕はもう諦めないから」  気持ちを伝えることを。
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