第四章

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 尊大な口のきき方をしながらも、僕の唇も、手も、震えていた。震えて固まりそうになる手を、やっとおじさんの襟元から離す。ゆっくりと顔を上げるおじさんを見つめながら、僕は弱々しくなりそうになる声に力を入れる。 「もう、同情じゃないから。自分勝手に、僕はあなたを」  おじさんは驚いていない。ただ、悲しそうに僕を見つめ返している。 「あなたを、好きになってしまったから」  悲しそうに目を伏せたのは、僕にどういう感情を持っているから? 「あなたが好きだから、一緒にいたい。僕を、父さんを見るために近くに置いているのでもいい。ただ、一緒にいたいんです」  今の僕の言葉は、好きと言う気持ちは、僕には光のようなものだけれど、おじさんにとっては、輝くものではないのかもしれない。父ではない者にぶつけられるこの気持ちは、悲しく、迷惑なものなのかも。  夜空に光が散り、消えていく。  そう。消えてしまってもいいんだ。ただ一瞬でも、あなたの心を光で満たせたら。
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