第五章

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 八月も終わりに近づき、夜の涼しさは時折秋を感じさせるようになった。夏はこんなにも短かっただろうか。  僕はおじさんの家に通っている。  最近、合鍵をもらった。万が一部屋で倒れている時に、僕がすぐに入れるようにしたいとねだったのだ。おじさんは、「そうなる前に自分で病院に電話するしぃ」と、深刻そうな様子もなく笑っていたが、僕はまったく信用していなかった。それくらい、おじさんが弱って見えたからだ。家を訪ねたら息を引き取っていることもあるのではないかと、思わせるくらい。  バイトは入ってはいるが、時間を短くして毎日おじさんの家に通えるようにしている。店長や他のバイト仲間に事情を話しているわけではないが、同じ院内で起こっていることだ、僕が父の友人に付き添っているというのは、いつのまにか知られていた。だから誰も僕に不満をぶつけることなく、元々入っていたシフトを代わってくれた。
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