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僕がこういうことを言うと、おじさんはヘラヘラ笑う。まるで相手にしていないかのような態度を取る。それでも僕は、好きだと言葉を重ねた。
「凪さあ」
珍しく迷惑そうに、おじさんは自分の髪をくしゃっと掻きあげた。
「俺が好きだって一人で勘違いするのはいいよ。でもそれを他人に言うのはよせ。よく知らない相手に傷つけられることの怖さは、凪が一番よくわかってるだろ。そういう種を自分で蒔くな」
「勘違い……」
「凪は認めないんだろうけど。俺はやっぱり、凪のその気持ちは同情だと思うよ」
「そうですか」
そう言い切られて、悲しくないわけはない。でもそう言うおじさんも悲しそうな目をするものだから、僕はそれ以上否定しなかった。
「凪」
そう。そして僕の気持ちを否定するような言葉の後必ず、おじさんは僕の右目にキスをする。父に対する想いを僕に見せつけるように。
僕はソファーから立ち上がってベッドに上がり、自らおじさんの唇に顔を近づける。父を見るためでもよかった。おじさんが触れてくれるのなら。
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