第五章

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 ◇  翌日マンションを訪ねると、おじさんは「調子がいいから今日は出かけよう」と言った。 「なら病院に行きましょう。久住先生が、痛み止めのベースの量を増やした方がいいかもしれないって言ってましたから」 「ええー、病院行くと待ち時間長いから一日潰れちまうだろ? 今日は調子いいんだし、まだ大丈夫だよ」 「だけど……」 「ベースの量上げるとまた眠くなっちまうしさ。数日したら慣れるっていうけど、慣れるまで生きてるかわかんねえし。少しくらい痛い方が頭もはっきりしていいってもんだ」  久住先生は、痛みは他者評価ではなくその人自身の主観的な評価なのだと言っていた。それなら、おじさんが大丈夫と言うなら無理に勧めない方が良いのだろうか。 「でも酷く痛くなったりしたら、一緒に病院行くんで夜中でも連絡してくださいね」 「へいへい」 「軽い」 「ありがたき幸せ」 「か、る、い」  おじさんが楽しそうにへらへら笑うから、僕まで楽しくなってしまう。どこに出かけようかと、二人でソファーに座って考えた。
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