第五章

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「中、入りませんか? 早く休んだ方がいいです」 「え、ああ」  不自然に話を逸らしたと思う。別に父の話をしたくなかったわけではない。ただ、より遠くの僕の過去を見ることができるようになったおじさんが、死に近づいているようで怖かったから。おじさんが見たがるような僕の幼い時の父との思い出話を避けてしまったのだ。  そもそもここに連れて来たのは、父の思い出を見せられるかもしれないと思ったからだというのに、今、おじさんに過去を見せることが怖いと感じている。  リビングに通して何か飲み物でも、と思ったが、おじさんが苦しそうに咳をして顔を歪めたから、やはり先に寝かせた方が良いと思えた。 「来客用の布団、しばらく干したりしていないので、僕のベッドでもいいですか?」 「いや、凪こそおっさんが寝ていいの?」 「……好きな人ですから」
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