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「なあ、凪」
「しゃべらないで寝て休んでてくださいよ。麦茶でもとってきます。少しずつでも飲めますよね?」
「大丈夫だよ。横になってるだけでだいぶ楽だからさ。ここにいろよ」
僕は振り返る。おじさんの心から滲み出た、願いの言葉のように感じたから。
「……多分、俺もうほとんど時間ねえわ」
微笑みながら、おじさんは言った。僕はベッドの横に立ち尽くし、言葉の意味をゆっくりと咀嚼する。
「な、に、時間なんて、元々、ないじゃないですか……」
「ん、そうじゃなくて。なんかさ、身体がまた一歩終わりに近づいた気がするんだ、最近。呼吸の苦しい感じ、一時良くなってたんだ。痛みと喉の閊えは酷かったんだけど。だけどここ何日か、呼吸が怪しいなあって思うよ」
手招きされ、僕はおじさんに近づけるように膝を着く。
「次目を覚ますことはないかもしれない。息が止まっているかもしれない。だから、一緒にいるときは、いっぱい話してえよ。寝てる場合じゃない。凪が、ここにいんだから」
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