第五章

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 僕は、何をしてしまったのだろう。何を言ってしまったのだろう。情けなく股間を晒し、汚れた自分を見下ろす。  ───なんて汚いんだろう。  時間があったら好きになっていたと、そんな、これ以上ない言葉をもらっても満足できなかった自分。誰より辛いのはあの人の方なのに。  死を受け入れていた綺麗なあの人に、どうしてあんな言葉を言わせてしまったんだ。  おじさんを追いかけることもできず、僕はいつかと同じように、蹲ってむせび泣くしかなかった。
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