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「また一人で抱え込んでいるの……? お母さんは何ができる?」
抱きしめられる。濡れた髪から落ちる雫に、服が濡れるのもかまわずに。
「身体もこんなに冷たくなってる」
冷房がきき過ぎていることも気づかずに床に座り込んでいたから、僕の身体はシャワーを浴びたにも関わらず冷えていた。母はそれを温めるように、抱きしめてくれる。
高校生の時も、僕をこうして抱きしめてくれた。あの時より小さく感じる背中に、僕は手を回す。
僕は、今日人を傷つけた。酷いことをした。死を静かに受け止めていた人に、その心を乱すようなことを言った。あんなことを言わせてしまった。
「僕……柏木、さんに、酷いことをして……っ」
「うん……」
「すごく、酷いことで……っ」
優しい人だから、強い人だから、死を受け入れていた。僕が恐れないように、後悔しないように、温かい想いだけを残そうとしてくれていたのに。
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