はらぺこ食堂

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浴衣姿のカップルが、大きな声で会話をする。 「ねえ、このお祭りははらぺこ祭って言うんだけど、この祭の由来って、知ってる?」 「えー、あたしわかんなーい!教えて!教えて!」 「このお祭りはね、その名もずばり、はらぺこさまっていう食いしん坊のかみさまを祀ったお祭りなんだ。はらぺこさまはね、とても食いしん坊すぎて、周りのものすべてを食べちゃうんだ。それで、動植物はもちろん、食べるものがなくなると人間や他のかみさままで食べちゃうらしいんだよ。」 「え~、何それこわ~い!」 「そう、恐ろしいことになっちゃうから、それを防ぐために、はらぺこさまが本当にはらぺこにならないように、こうやってお祭りを開いて、はらぺこさまに食べものを供養してるんだって。」 「へー、あっちゃん詳しいね~、すごーい!」 「もともと民俗学とか好きだしね、色々調べたんだ、このお祭りのこと。で、もっと怖い話があって…。」 「えー、なになに?みぃ早くききたーい!」 「みぃちゃん、怖すぎて夜眠れなくても知らないよ…!あのね、この神社の奥に、食堂を象った祠があるんだけど、そこは通称“はらぺこ食堂”って言われていて、はらぺこさまが食事をするところだと伝えられているんだ。で、ときどきはらぺこさまが人間を晩餐会に招待するらしいんだけど、その招待する理由ってのが…。」 「え?なに?」 「人間を食べるためで、美味しく食べるために、何日もその人間に食べものを食べさせて、丸々太らせてから、食べるんだって、人間が鶏を食べるみたいに…。」 「えー、そんな話、どっかで聞いたことある~。よくある話~。あっちゃん、つまんないよ~…。あたし帰る!」 「え?待ってよみぃちゃん!待って~…。」
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