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急いでいる時に限って余計なものが目に入ってしまう。
少年は急ぐのを諦め、目に入ってしまった何かを確かめるためにダストシュートの前に近づいた。
居住区のゴミはダストシュートに捨てられる。
居住区の男たちは怠け者だ。ゴミを捨てるのも面倒くさがる。だから、ダストシュートの周辺にはゴミが散乱している。散乱したゴミはそのうち誰かがダストシュートに放り込む。
臆病者たちがゴミを片付けていると言われていた。
少年が目に留めてしまったのは、本だった。居住区でたまに見つける機器の説明書の類だ。既にあちこちの部屋で似たようなのを見つけていた。説明している機器が何なのかはよく分からない。機器の説明をする本があっても本が説明している機器はどこにも無い。
文字が書いてあるとどうしても読みたくなってしまう。今回も、少年はその本を拾い上げ読み始めてしまった。
気がつくとほとんど全部を読み尽くしていた。
宮殿の光が変化している。時を告げる鐘の音も聞こえてきた。
少年は少し迷ってからその本を鞄に放り込んだ。
急がないと。
いつもよりだいぶ遅くなっている気がした。
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