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配給所の傍らに立つ建物の屋上では目つきの鋭い痩せぎすの若者が身を乗り出すようにして騒動を見下ろしていた。時折、思い出したように長い鉄筋を振り回している。
「なんだ」
布を巻いた太い棒を担いだ太めの若者が後ろから声をかけてきた。
「いや、また誰か臆病者をいたぶってんなと思ってさ」
「どれ」
太めは鋭い目の若者と並び、配給所の騒動を見下ろした。
ベルトコンベアのあたりで灰色のマントの男が倒れていた。
「やってんなあ」
鋭い目の痩せた若者はその目をさらに細め薄笑いを浮かべた。
灰色のマントの男は周りを囲むガキどもに無理やり起こされてから何度か殴られていた。まったく抵抗はしない。深く被っていたフードがガキどもの手で外された。
「なんだ、あいつ、変な髪だな。あんなの見たことあるか」
太めの男が聞いた。
「いや、あんなのは見たこと無い」
鋭い目が答えた。
二人の間にいつの間にか長い茶色の髪をなびかせた若者が立っていた。
じっと下を眺めている。
いきなり何も言わずに飛び降りた。
「おい、待てよ」
太めが空を飛ぶ茶色の後ろ姿に手を伸ばす。
茶色は隣の建物の屋根に着地すると太めの声には振り向かずに走り続け、別の屋根めがけて飛んだ。
「飛べねえよ」
鋭い目は小さく舌打ちすると後ろの階段を目指して走り出した。
「待てって」
太めは棒を担ぎ直し、急いで鋭い目を追った。
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