2人が本棚に入れています
本棚に追加
おしぼりが、やってきた。それで顔を拭いたら、思い切り嫌な顔をされた。
「それ、やめてくんない。オッサン臭い」
それにピタ、と動きを止める。
オッサン臭い、言われたくない。
おしぼりを、スッとおろす。
すると君は、上機嫌。
「よし、良し。じゃあパスタ食べよっか」
そして君は、ぼくのカルボナーラを普通に突っつく。
自分の前には頼んだピザがあるくせに。
それにぼくは、手を伸ばす。
パシッ、とはたかれる。
「……なにしてんのよ、彰孝(あきたか)」
理不尽な態度に、ぼくはいきり立つ。
椅子を蹴っ飛ばして立ち上がり、美奈を睨みつける。
それに、美奈はもぐもぐとパスタを食べる。
でも、気づいた。
その握ったフォークの先が、小刻みに震えていることに。
白けた。
「……先、帰ってるわ」
ぼくは怒りをそのまま気化させて、出てきた食べ物そのままに、席を立った。
帰り際、伝票の支払いを済ませる。
最後にちらりと振り返ったが、彼女はさっきの――フォークを口につっこんだ姿勢から、微動だにしていなかった。
しょうもない。俺たち、二人とも。
最初のコメントを投稿しよう!