おしぼり

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 おしぼりが、やってきた。それで顔を拭いたら、思い切り嫌な顔をされた。 「それ、やめてくんない。オッサン臭い」  それにピタ、と動きを止める。  オッサン臭い、言われたくない。  おしぼりを、スッとおろす。  すると君は、上機嫌。 「よし、良し。じゃあパスタ食べよっか」  そして君は、ぼくのカルボナーラを普通に突っつく。  自分の前には頼んだピザがあるくせに。  それにぼくは、手を伸ばす。  パシッ、とはたかれる。 「……なにしてんのよ、彰孝(あきたか)」  理不尽な態度に、ぼくはいきり立つ。  椅子を蹴っ飛ばして立ち上がり、美奈を睨みつける。  それに、美奈はもぐもぐとパスタを食べる。  でも、気づいた。  その握ったフォークの先が、小刻みに震えていることに。  白けた。 「……先、帰ってるわ」  ぼくは怒りをそのまま気化させて、出てきた食べ物そのままに、席を立った。  帰り際、伝票の支払いを済ませる。  最後にちらりと振り返ったが、彼女はさっきの――フォークを口につっこんだ姿勢から、微動だにしていなかった。  しょうもない。俺たち、二人とも。
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