2.What's in a Name? -名前が何だというの?-

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 銀と水晶で装飾された、美しいことで世界にも名高いイクスピア王国の王城。  その高級そうな絨毯の敷かれた広い廊下を、十代半ばと思わしきが少年が慣れた様子で歩いている。清潔感のある、中性的な顔立ちをした少年だ。深紫を基調にした衣装をまとい、長い黒髪を一つにまとめている。  彼は第二王子の執務室へ向かっていた。  少年は一つの扉の前で立ち止まり、ノックした。中から誰何する声が聞こえてくる。  その声に少年は緊張する様子もなく答えた。 「ロミオです」 「入れ」  少年――ロミオが上品な彫刻の施された扉を開いて入室すると、中にいたのは書類仕事をしている一人の青年だけだった。 「ハムル様、お呼びですか?」 「待ってたぞ、ロミオ」  ロミオが声を掛けると、青年??第二王子ハムレットは執務机から顔を上げて応えた。  第二王子は今年18歳になったばかりの精悍な好青年である。  ロミオはその言葉には応えず、勧められてもいないソファーに座った。王族の前で不敬にもほどがある態度だが、どちらも気にした様子ない。 「相変わらず大変そうですねぇ」  ロミオは机の上に積んである書類の山を見てのんびりと言う。  かろうじて敬語を使ってはいるが、そこから敬意は一切感じられない。むしろ友人を揶揄するかのような、親しみを込めた声音だ。 「そう思うんなら手伝ってくれ」 「そんな、官吏でもない私が王宮の書類を拝見するなど、分不相応というものです」 「と言いつつ、面倒なことをしたくないだけだろう。お前に手伝ってもらえればかなり楽になるのになぁ」  ハムレットはそう嘯くがロミオはきれいに聞き流す。 「若い時の苦労は買ってもせよ、と言いますよ」  ロミオはにっこりと微笑んだ。  ハムレットは半眼でロミオをにらむ。 「確か、お前の方が年下だったと思うのだが……」
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