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二人が雑談をしていると――ハムレットは仕事をしながらであったが――再び執務室の扉がノックされた。
「誰だ」
「ジュリエットでございます」
「おお、入れ」
「失礼いたします」
入室してきたのは、少女とも女性とも言い難い年頃の娘だ。白金の髪がなんとも美しい。
「やっと来たか」
「お待たせしてしまったようで申し訳ありませんわ。ハムル様、ロミオ様」
軽く頭を下げるそのしぐさは、ドレスをまとっているが凛々しいとすら形容したくなる。
「では父上のところへ行こう」
「え?」
「え?」
ロミオとジュリエットはハムレットの言葉に硬直した。
だが、ハムレットは二人の様子など関係ないといわんばかりに話を進める。その表情はしてやったりとイイ笑顔だ。
「ああ、ちゃんと話は通してある。心配するな」
「そもそも話を通す云々以前に、わたくしたちが初耳なのですが」
「何かなさるときは、あらかじめお教えくださいといつも申し上げているではないですか」
「わたくしたちは非公式とはいえ第二王子殿下の側近であると自負しているのですが」
「あまりにも我々を蔑ろにした行いです」
「だいたい陛下にご挨拶するのにこのような質素なドレスではあまりに……」
「そうですよ。陛下に拝謁するのにこのような普段着でなどありえません」
「それにこの姿のままで陛下のお目にかかるなど、不敬罪に問われに行くようなものではございませんか」
二人はハムレットを非難する言葉を並べてはいるが、面倒だからいやだという本音が透けて見える。
「問題ない。さあ行くぞ」
何かと理由をつけて拒否しようとする二人を、ハムレットは無理矢理連れ出すのだった。
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