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◇
「父上、兄上、お待たせいたしました」
豪奢な王の応接間には王と王太子がいた。
ハムレットは二人の対面のソファーに腰掛ける。ロミオとジュリエットはハムレットの後ろに控えた。
「いや、時間通りだよ」
ハムレットの兄である王太子クローディアスは柔和に微笑む。顔立ちはハムレットそっくりだが、落ち着いた雰囲気を醸し出している。
「ハムル、その二人か? 紹介したい者というのは」
国王リアの言動一つ一つからは貫禄が覗える。さすが10年以上、一国の長を務めているだけのことはあるといえよう。
「はい父上。例の件に関して適任かと思いまして」
「名は何という」
「ロミオ・モンテッキと申します。非公式ではありますがハムレット殿下にお仕えしております」
「同じく、ジュリエット・カプレーティと申しますわ」
そう名乗り、二人は一礼する。それは王族の側近にふさわしく洗練されていた。
「ああ、この前ハムルが側近とした者たちか」
リアはそんなに緊張するな、と穏和に笑った。
「ハムルが世話になっているな」
「ハムルの突拍子もない思い付きに振り回されているのだろう? 大変じゃないかい?」
昔は私もよく振り回されたものだと、クローディアスはしみじみと言う。
「な、兄上、そんな昔の話。今はもうそんなことはありませんよ」
「へえ? ハムルはこう言ってるけど君たちの目から見てどう?」
ロミオとジュリエットは顔を見合わせた。恐る恐るロミオが口を開く。
「率直に申し上げてよろしいのなら」
「うん、そう言ってる時点で答えてるようなものだと思うけど、言ってみて」
「本日陛下に拝謁の栄誉を賜ることすら伺っておりませんでした」
ロミオは根に持っていたらしい。
ハムレットには父親と兄から生暖かい視線が注がれたのだった。
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