2.What's in a Name? -名前が何だというの?-

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 ◇ 「父上、兄上、お待たせいたしました」  豪奢な王の応接間には王と王太子がいた。  ハムレットは二人の対面のソファーに腰掛ける。ロミオとジュリエットはハムレットの後ろに控えた。 「いや、時間通りだよ」  ハムレットの兄である王太子クローディアスは柔和に微笑む。顔立ちはハムレットそっくりだが、落ち着いた雰囲気を醸し出している。 「ハムル、その二人か? 紹介したい者というのは」  国王リアの言動一つ一つからは貫禄が覗える。さすが10年以上、一国の長を務めているだけのことはあるといえよう。 「はい父上。例の件に関して適任かと思いまして」 「名は何という」 「ロミオ・モンテッキと申します。非公式ではありますがハムレット殿下にお仕えしております」 「同じく、ジュリエット・カプレーティと申しますわ」  そう名乗り、二人は一礼する。それは王族の側近にふさわしく洗練されていた。 「ああ、この前ハムルが側近とした者たちか」  リアはそんなに緊張するな、と穏和に笑った。 「ハムルが世話になっているな」 「ハムルの突拍子もない思い付きに振り回されているのだろう? 大変じゃないかい?」  昔は私もよく振り回されたものだと、クローディアスはしみじみと言う。 「な、兄上、そんな昔の話。今はもうそんなことはありませんよ」 「へえ? ハムルはこう言ってるけど君たちの目から見てどう?」  ロミオとジュリエットは顔を見合わせた。恐る恐るロミオが口を開く。 「率直に申し上げてよろしいのなら」 「うん、そう言ってる時点で答えてるようなものだと思うけど、言ってみて」 「本日陛下に拝謁の栄誉を賜ることすら伺っておりませんでした」  ロミオは根に持っていたらしい。  ハムレットには父親と兄から生暖かい視線が注がれたのだった。
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