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「まあいい。いろいろ言いたいことはあるが後にしよう」
王の咳払い一つで場には適度な緊張感が戻る。
「ハムルの推薦だ、取り敢えず期待はしておこう。ロミ……ああ、ええと……」
「陛下、今この場にはロミオ・モンテッキとジュリエット・カプレーティとしております。どうぞ、そのようにお呼びいただければ」
しかし、さすがのリアもまだ驚きを引きずっていたようだ。
思わずロミオとジュリエットは苦笑した。
「ああ、うむ。
……ロミオ、そしてジュリエットよ。以後そなたらの働きはハムルの評価に直結することとなろう。余の命を受ける覚悟があるか?」
その言葉に緊張が走る。
だが、この場にそれを表に出すような者などいない。
顔色一つ変えずロミオとジュリエットは応じる。
「陛下、さすがに内容も知らずに返答はいたしかねます」
「陛下の仰る通り、わたくしどもの安請け合いのせいでハムル殿下の評価を落とすわけにはまいりませんもの。安易にはお受けできません」
リアは片眉を上げた。
クローディアスは内心の読めない微笑みを浮かべて二人を眺める。
「ほう。推測できているように見受けたが、余の買い被りであったか?」
「モンタギューとキャピュレットの、確執についてだとは思いますが……」
「なぜそう思う?」
ロミオの答えを、リアは試すようにさえぎる。
「両家の確執は最近目に余るようになってきているとは感じていましたもの。私たちの"立場"が十分であるとおっしゃるなら、このくらいしか思い当りませんわ」
その通りだ、とリアは答えた。
「十分なほど正解を推測できているではないか」
「お言葉ですが、どのような決着を望んでおられるのか、私どもには陛下の御心は分かりませんでしたので」
「もし両家の当主を暗殺せよとか、両家を親友と呼べるほどの親密な関係にせよなどと命ぜられても、荷が勝ちすぎるとしか申し上げられません」
二人の答えに、ニヤッとリアが表情を崩した。
「なるほどの。ハムルが推薦してくるだけのことはあるようだ。
モンタギューとキャピュレットの諍いで商人たちにも影響が出ていることは知っているだろう。流石に国民の生活を圧迫しかねないものを放っておくわけにはいかん。
そこで、お前たちには内部から働きかける役割を担ってもらいたい」
「御意に」
「御意に」
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