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2015年9月23日
その時は唐突に訪れた。
『キャーー!』
『おい!なんだよこれ!!』
『早く校舎に入れ!!急げ!!』
至る所で上がる悲鳴
逃げ惑う人、しゃがみ込んで泣き出す人…
ゴオオオオオ…
空に浮かぶ漆黒の渦に視線を戻す。
午後授業を終えて、いつも通り帰ろうとしていたら、それは何の前触れも無く、とてつもない轟音を伴って現れた。
今もなお、校舎の窓をビリビリと揺らす程の音を鳴らしながら渦を巻くソレに変化があった。
ゆっくり…ゆっくりと降りてきている…
周りを見ると、凄い勢いで帰宅しよしていた生徒達が校舎に向かって戻っていた。
なんだよ…これ…
俺は、初めて腰が抜けた。
足が動かない…と言うか、体が上手く言う事を聞かない…。
『ちょっと!何やってんのよ!早く私達も避難するわよ!』
その時、すぐ後ろで声が聞こえたので振り返る。
『無理だよ…あんなのおっこって来たらどっちにしたって死んじゃうよ…』
するとそこには、二年生の有名なコンビの水谷先輩と藤乃先輩が居た。
俺と同じように腰が抜けてへたり込んでしまったのだろう藤乃先輩の腕を引っ張って水谷先輩が立たせようとしている…
…ふと、視界の端に映ったのは、その横で腕を組んで苦い顔をして空を睨んでいる強面の体格の良い男子生徒。
後輩人気ナンバーワンの、3年の澤野先輩だ。
こんな状況なのに、やけに落ち着いていた。
気が付けば他の生徒が周りに居なくなっている。
みんな校舎にもう避難してしまったのだろうか…
直ぐ上に迫った真っ黒な渦は太陽を隠して、大きな影を落とす。
『ちょっと!もう間に合わないじゃないバカ!』
『ゴメンね、姉さん…ボクね、姉さんとであえてよかった!…ありがとう。』
『何諦めてんのよ!…ったくもう…』
もう、後10秒もすれば直撃しそうな位渦は俺らの頭上にせまっていた。
涙ながらに力ない笑顔を向けた藤乃先輩に、水谷先輩も怒りながらも慈しみに満ちた笑顔を向けていた。
『……』
澤野先輩は、腕を組んだまんま静かに渦を睨む目を閉じた。
こんな状況なのに、肝が座ってるというか何と言うか…
まぁ…
こんな時に避難しなかった俺もどうかと思うが…
黒い渦は、すでに直撃寸前だ。
さよならマイファミリー…
俺は意識を手放した
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