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塾へ着くと、お弁当を食べながら参考書を開く。
話をしている者など、誰も居ない。
ここでは、
母がテレビや本で見たという“頭にいい食材”だらけの、味など二の次のお弁当と、
感情のない文字や数字の羅列だけが、私の相手なのだ。
食べ終えた弁当箱をカバンに仕舞おうとして、ふと、書店の小さな袋が目に入る。
あのペンが入った袋だ。
私は、忘れていた宝物を見つけたような気持ちでそれを取り出すと、
試し書きのつもりで、参考書のページの隅に落書きをした。
“塾嫌いー”
“弁当まずいー”
…ああ、いけない…
私はペンをくるりと返すと、そんな呟きを掻いて消した。
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