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グレーのスーツ・黒のネクタイの黒髪の男は、
すがりつく女を突き飛ばした。
『待って!あたしあなたに合うように頑張って良いおん…ーー』
『思いが重いって何度も言っただろう!』
男はポケットからケースを出し女の足元へ放った。
俺は無意識に駆け出して、男の肩に右手を当てた。
身長男の方が20㌢高いけど男の胸ぐらをグッと掴む。
『きみ、何か?』
『あんたは最低ですっ!俺はさっきからずっと見ていましたからね!』
男が腕を上げると高そうな時計がチラリと見えた。
『部外者は口を挟まないでいただきたい。
きみはここの店の従業員だろう。
私の胸ぐらに手をかけました、と言いに行きましょうか?』
所詮俺はバイトの身、店に迷惑はかけられない。
黙って男を睨んでいたが、時計がキラリと光ったかと思うと同時に俺は道路に転がされた。
『ひどい!見ず知らずの人にまで手をあげる事ないじゃない!』
『黙れ!おまえとも今日限りだ。
婚約指輪売れば結構なお金になるだろう。
取っておきたまえ』
『修治さん!』
『名前で呼ぶのも最後にしていただきたい、じゃ』
男は高価そうな車に乗り込んでコンビニ駐車場から姿を消した。
『くそぅ!』
俺は柄にもなく車に向かって毒舌づいた。
『波留っ!』
『あぁ?…今行きますよっ』
スカートの埃をはらっていた女の人へ視線を向ける。『大丈夫…じゃなさそう』『平気、かばってくれてありがとう』
胸までの黒い髪を後ろに払い、その女の人はケースを俺に差し出した。
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