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『これ…あたし捨てられないからあなたにあげる』
『えっ?…』
正方形のソレは中を見なくても指輪だと俺にもわかる。
つき出されたケースを彼女の方へゆっくり返す。
『指輪だろ?俺にどうしろと言うんだ?』
『だけど持っているとつらくなるから…婚約までした彼なのに今更解消だなんて…だから…あたし…』
彼女の目から涙が落ちた。
『わかった、これは俺が預かるから気持ち落ちついたら取りにきて。
ここのコンビニで夕方から今ごろまでバイトしてるから』
店のドアが開いて唐沢が波留を急かす。
『波留!レジ!』
『今行きますっ』
俺は指輪の入ったケースをポケットに入れ店内へと走った。
振り返ると彼女は哀しそうに車が去った方を見ていた。
『俺…あんたがふられた事誰にも言わないからさ。
俺も今日ふられちゃったんだ。
おんなじ…
だから、笑わないよ』
『えっ…あなたもふられたの?…』
『だから、寂しくなったらコンビニ…買い物にきてよ。指輪も持ってるからさ』
彼女は車が行った方向ではなく、俺を見ていた。
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