《第1章・失恋しました》

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『これ…あたし捨てられないからあなたにあげる』 『えっ?…』 正方形のソレは中を見なくても指輪だと俺にもわかる。 つき出されたケースを彼女の方へゆっくり返す。 『指輪だろ?俺にどうしろと言うんだ?』 『だけど持っているとつらくなるから…婚約までした彼なのに今更解消だなんて…だから…あたし…』 彼女の目から涙が落ちた。 『わかった、これは俺が預かるから気持ち落ちついたら取りにきて。 ここのコンビニで夕方から今ごろまでバイトしてるから』 店のドアが開いて唐沢が波留を急かす。 『波留!レジ!』 『今行きますっ』 俺は指輪の入ったケースをポケットに入れ店内へと走った。 振り返ると彼女は哀しそうに車が去った方を見ていた。 『俺…あんたがふられた事誰にも言わないからさ。 俺も今日ふられちゃったんだ。 おんなじ… だから、笑わないよ』 『えっ…あなたもふられたの?…』 『だから、寂しくなったらコンビニ…買い物にきてよ。指輪も持ってるからさ』 彼女は車が行った方向ではなく、俺を見ていた。
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