《第1章・失恋しました》

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ゆっくりと視線を道路へ戻し歩きだす彼女に、俺は叫んでいた。 『女のひとり歩きは危ないよ!タクシー呼びなよ!』『ありがとう…だけど良いの…』 『だけど!』 『波留っ!レジっ!』 その苛立った声に彼女から店内へと視線をやると、お客がレジへと並びはじめ俺は仕方なくレジで清算を始めた。 チラッと外に目をやると彼女はもういなかった。 『1850円になります』 彼女は無事にタクシーを拾ったのだろうか? 見知らぬ彼女が俺と同じ日に失恋なんて、偶然といえば出来すぎた偶然だけど。 この時間にも誰かが失恋する事はあるからこそ、 それが身近なバイト先で繰り広げられただけ。 ただそれだけなのに俺の中に彼女の哀しそうな表情が残っていた。 それからアイスクリームの補充をしレジを打ち時間が過ぎていった。 『お先にあがります』 『おぅ、お疲れっ。 帰って課題やるのか?』 『課題は毎日出るんで大変っす、帰って2時間やるつもりで』 『けど課題に終われるのも今のうち、社会人になったら懐かしいさ』 事務所でそんな会話をし、俺はコンビニから外に出ると夜風が髪をなびかせた。 この夜風が失恋の哀しみを持っていってくれたら良いのに… そう、俺と彼女と2人分…
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