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ゆっくりと視線を道路へ戻し歩きだす彼女に、俺は叫んでいた。
『女のひとり歩きは危ないよ!タクシー呼びなよ!』『ありがとう…だけど良いの…』
『だけど!』
『波留っ!レジっ!』
その苛立った声に彼女から店内へと視線をやると、お客がレジへと並びはじめ俺は仕方なくレジで清算を始めた。
チラッと外に目をやると彼女はもういなかった。
『1850円になります』
彼女は無事にタクシーを拾ったのだろうか?
見知らぬ彼女が俺と同じ日に失恋なんて、偶然といえば出来すぎた偶然だけど。
この時間にも誰かが失恋する事はあるからこそ、
それが身近なバイト先で繰り広げられただけ。
ただそれだけなのに俺の中に彼女の哀しそうな表情が残っていた。
それからアイスクリームの補充をしレジを打ち時間が過ぎていった。
『お先にあがります』
『おぅ、お疲れっ。
帰って課題やるのか?』
『課題は毎日出るんで大変っす、帰って2時間やるつもりで』
『けど課題に終われるのも今のうち、社会人になったら懐かしいさ』
事務所でそんな会話をし、俺はコンビニから外に出ると夜風が髪をなびかせた。
この夜風が失恋の哀しみを持っていってくれたら良いのに…
そう、俺と彼女と2人分…
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