《第1章・失恋しました》

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『高級そうな指輪をおまえが持っていても仕方ない。ちゃんと相手の女の人に返さなきゃ…って母さんは言うけど、いったいどうやって』 授業を終えてバイト先のロッカールームで制服を着ながら、唐沢先輩に相談した。 『波留、何故俺に?』 『学校の友達に相談するよりか指輪を渡して結婚してる先輩なら…って』 『ケースからして高そうな指輪が入ってるって感じ。嫁さんにあげた結婚指輪よりかはるかに高そうな。 …っていうより、その女の人がここに来る確率はあるのか?』 『店に来る事がわかってればこんなに迷わないさ』 『よ~く思い出して手がかりを掴むんだな。 この辺はオフィス街だろ。何か情報得られるまで肌身離さず指輪を持ってるしかないだろ』 さぁ仕事仕事っていうように、ロッカールームに忘れ物を取りに来た唐沢先輩が波留を急かす。 『入ったら品だし頼む』 『はいはい』 『返事は1回っ』 母さんにもだけど、唐沢先輩にすべてを言った俺は少しだけ気が楽になった。 誰かに言うって事がこんなにも後押ししてくれる事あるんだな。 俺はカードを通し仕事モードに頭を切り替え店内へと急いだ。
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