プロローグ

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 氷河期に突入していた僕のノート上では、まるで高度経済成長を迎えたかの様な急激なインフレーションをみせている。  何も考えず、しかしペン先は止まる事を知らず無地のノートをボールペンのインクが染めていく。 「ほんと、毎度毎度その集中力だけは関心するよ」  呆れたような声で肘付きながら要は僕に悪態を付くが教授のお話同様、生憎と僕の耳には都合の良いことしか聞こえないし、反応しないのだ。  今日の講義はどうやら気合いが入っていたのか長文が多く見受けられる。  これは僕に対する冒涜なのだろうか?と懸念を抱かずにはいられない。  書き写すのにだって労力が掛かるのだ、僕の指から腕に掛けてアドレナリンが溢れきっている。  この労力の先には何があるのだろうか、いやわかっているともさ、単位でしょう? 「ねぇ、要」  そんなつまらない自問自答が頭の中を過ぎりに過ぎるので、目線はノートから移さず、手も止まらせずに要に声を掛ける。  何か面白可笑しい興味を惹くようなエピソードを語ってもらおうという魂胆だ。 「んー?」  しかし思っていたような爽やかボイスではなく、間延びした返事が返ってきた。  どうやら机に向かって何かに集中しており、こちらに見向きもせず返事をしているようだ。 「……何を書いているんだい?」    横目で見るとまた何かノートに色々と書き込んでいるではないか。  おいおい、もしやレポートの追加等とは言わないだろうなと思わずペンを止めてしまった。  もし本当にそうなら必要以上に気が滅入るので勘弁被りたい。 「あぁ、インターンシップの報告書さ」  半ば諦めた気持ちで返事を待つと、意外と別件であることに安堵した。  そしてそういえば要が夏休みにどこかの企業へ課外実習へ行くって言っていたなと思い出す。  イケてる上に学業優秀とか何を目指しているのだろうかこの男は。 「インターンシップってあれだろう?選択した企業に行ってお試し入社するみたいな」  言ってから思ったがかなりアバウトな、的を得ているような得ていないような内容だった。  でもあながち間違えてはいないだろうし、ただの会話にそこまで気を使う必要はないので気に留めないことにする。
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