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「まぁ、そうだね。俺は営業に配属されてさ、社員の方の後ろについて挨拶廻りすることがほとんどだったんだけどな」
そこからは、有意義な体験だったようで思い返すことが多いのか素敵な笑顔を浮かべていた。
あぁ、眩しいなぁ。蕩けてしまいそうだ。
しかし、こちらの思惑通りに色々と語り始めてくれた。
どうやらその企業にはうちの大学からだけではなく、他の大学からも結構な数の学生が来ていた様で活動期間中は共にしたようである。
その際に知り合った学生たちとも連絡先を交換したらしく、今も尚、何かと機会があれば意見を交換したり交友の幅を広げているらしい。
実に、健全な学生生活を送っている要が眩しくて、…眩しい事この上ない。
適当な相槌を打ちながら音楽代わりにしていた要の話は終わり、僕に
交代だと告げるかのように話題を振ってきた。
「そういう一樹は夏休み何をしてたんだ?」
ただの話題返しのつもりなのだろうが、その質問は僕に対しては野暮ってもので何をしていたかと言われれば答えることは一つしかないのだ。
「ん、バイトの掛け持ち」
これ以上語る事は何もないのだ。
あえて続けるとするならば、何の為に勤労し賃金を稼いでいたのかというところに焦点を当てなければならなくなってしまう。
「お前ってほんと、らしいよな。バイト中が一番輝いているってどういうことだよ……」
要は小さく溜め息を漏らしながら僕に対する評価を下した。
というのも以前、バイト先の飲食店に要とその知り合いらしき人たちが偶然来た事があったのだが建前上、"しっかりものの斉藤君"で通っている僕は猫を被った超いい感じの店員を要の前で演じてしまったのだ。
「僕の秘密を知った罪は、重いぞ?」
少し意味ありげな雰囲気をかもしつつ、いや全くそんな雰囲気は出ていないのだけれどあまりそのことに触れるなと警告する。
まぁ、別段そこまで隠しているわけでもないのでいいのだけれど、バイトしている姿って知られたら恥かしいじゃん?照れ隠し的な。
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