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「そういやさ」
レポートを書きながら今度は要が僕に話しかけてきた。
「なんだい」
僕も要のレポートを写しながら声だけで答える。
端から見れば両者とも勤勉青年に見えるのだが、実際は別の課題をやっているイケメンとカンニングをしているだけ僕は、この講義において比較的真面目ではない分類に入るだろう。
閑話休題、要がせっかく僕に話題を振ってくれるのだ。
貸して頂いたレポートもそろそろ仕上がるし、今度は僕の耳を貸そうではないか。
「今度、その知り合った他の学生たちと集まろうって話になってんだけど、一樹も来ないか?」
なるほど、どうやらお誘いのようである。
しかしこれには僕にも気掛かりな点があったので問うことにした。
「要君や、一ついいだろうか。インターンシップでの知り合いの集まりに何故無関係の僕を誘うのさ。この大学から一緒に行った人もいるんだろう?」
つまるところせっかく出来たグループの輪の中に関係の無い人間を放り込もうとしているのだ。
そんな風紀を乱すような真似を何故しなければならないのか、要の意図が全く理解出来なかったから僕は聞くことにしたのである。
「それなんだけどさ、一樹は遠藤晴香って人を知ってるか?」
要の言葉に親指を額に当てて考えているような振りをする。
何か考え事をする時の僕の癖だ。
それよりも遠藤晴香、遠藤はるか。聞いた名前のニュアンス的に女性名なのだろうと判断できる。
はて、僕はその人にどこかで会った事があるのだろうか。
要と遊んでいる時に、女の子が居た事は何度かあったけれど遠藤なんて子が混じっていた記憶が残念ながら存在していない。
このことから分かるように僕はその名前を一切存じえないといった結論を導き出した。
「いや、知らないかな」
色々と思考してみた割にはあっさりとした返答を返す。
シンプルイズベストって素晴らしい言葉だよね、英語だけれど。
「この大学の学生なんだけどさ、一緒にインターンシップに行ったメンバーの一人なんだよ」
ほぅ、ならば一緒に行ってくれば良いじゃないかと率直な感想を抱いたがどうやら話は続くようで耳を傾け、僕はペンを走らせた。
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