プロローグ

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「この大学でミスコンがこの前開かれただろ?」  さすがにイベント事に疎い僕でもそれは耳にしたことがあるぞと反応してみせる。  去年の文化祭なんていつ開かれていたの?と、その時は3日連続の休みだと喜んでいたものだがミスコンというものは何が皆を駆り立てるのか分からないがそれはそれは嫌でも、ほぼ毎日大学の連絡掲示板にある広告から目に付くのである。 「うん、開かれていたね」  そう、開かれていた事くらいは僕も認知しているのだ。    実際に参加はしていないが故に結果も知らないのだけれど。    けれども既にこの辺りで鋭いと自負する僕は気が付いたさ、その遠藤晴香って人がグランプリなんだとね。  だからこそ、それがどうしたんだいと思った。 「ミスコンのグランプリ受賞者が遠藤晴香って子なんだけどさ」  まぁ、そうだろうね。でないとこの話はまず話題にすら上がらなかったはずだから。  そろそろ僕のカンニング行為も終盤を迎え、ペン先を滑らせる速度はますます加速する。  ボールペンの芯が机を叩くことで事務的な音が心地良く、リズミカルに聞こえてくる。 「あまりにも容姿性格が共に八方美人過ぎるもんで、他の男連中はあの子目当てになっちまってんだよ。だから正直行ったところでやることなくてさ」  なるほど、本来親睦を深めるはずの人たちがその遠藤晴香に夢中で相手にならず、話し相手が欲しいという事らしい。   「それなら別に無理に参加しなくてもいいんじゃないかな」  きっと僕の言っている事は正論だ。    第三者としての視野から物事を観察するのが趣味と化している僕の意見はこの場に限り支持を得るはずだ。  誰が好き好んでそんな修羅場に身を放り投げるのだろうかと言いたくもなる。 「だよなぁ……、でも今度合同で行うプレゼンっていうのがあんだけどそれの打ち合わせも兼ねてる分参加しないわけにはいかないんだよな」 「それこそ、後日でいいじゃないか。今回行ったところで話し合いにならないことくらい分かっているんだろう?」  要の言葉に間髪居れず間髪入れずに即答した。  何故、そんなにも要が悩まなくてはいけないのだと。要の相談事にしてはあまりにも実の無い内容だった為、〆ようとしたのだが要は引き下がらなかった。
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