第1章

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―――やっぱりユメか… 何時もと変わらぬ世界で、今日も私は目を覚ました。 ―――何だったっけ? はっきりとは憶えていないが、今日の私はユメを見ていた。 誰かが私に一本のペンを渡していた。 ―――在るわけない、か… 空っぽの手を見つめながら溜め息をつく。 そして重い体と心で私は何時も通り、仕事の支度を始めた。 ―――あぁ…疲れた… やっと今日も終わった。 暗い空の中を歩けば零れ落ちる声。 「何時まで続くんだろな…」 ふと、通りすがった書店で沢山の本に囲まれた文具に気がつく。 その中で、一本のペンに目が止まった。 ―――こんなのだったかな…? 今朝のユメを思い出そうとする。 気がつけば私はそのペンを買って帰っていた。 やっぱり普通のペンだ。 何の変わりもない。 それはそうか、何処にでも在るもだ。 だが、書き心地はいい。 私は取り敢えず、気ままに何かを書き始めた。 それから数日、 私は飽きることなく何かを書き続けていた。 それは、文章であったり、物語であったり。 絵であったり、漫画であったり。 時には質問であったり、答えであったりと様々だった。 改めて読みなおすと、不思議なほどに自分が書いていた事を思い出せない。 まるで別の誰かが書いたような感覚。 私は何処かおかしいのだろうか? 疑いを持てばペンを動かす手は一時的に止まるが、気がつけばまた、いつの間にか書き始めていた。 もう、どのくらい経っただろう。 買い足された白いノートは次々と黒くなり、積み重なってゆく。 こんなに書いてどうするつもりだ。 自分を笑いながらも手を止めない私を喜んでいた。 何一つ、纏まりのないノート。 あちこちに散らばった言葉は、まるでパズルのピースのようだった。
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