第1章

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そんなある日。 ふと私は、何を思ったのかその沢山のパズルのピースを組み合わせ始めた。 何が、きっかけだったのだろう。 何か、ユメでもまた見たのだろうか? やがていくつかの形が現れてきた時、私はまたユメを見た。 「おめでとうございます。よく頑張りましたね。」 誰かが私に言う。 一体、何の事だろう? しかしこの声の主、何処かで聞いたような…。 「貴方の『時の翼』は無事に治りました。 これで貴方も元の世界へ還れますよ。」 「時の翼?」 「おや?以前お伝えした筈ですが…あぁ途中で通信が切れてしまったんですね。」 少し混乱する私に構わず、声の主は続ける。 「貴方にお渡ししたペンですが、あれは貴方がこの世界に来たときに失ってしまった翼を治すためのものです。 実際に、ペンは貴方の中に在るもので見えているものは仮初めです。 ペンは貴方が書いたものを栄養分に変えて翼を回復させるもの。 そして、傷ついた翼をかつてのものより力強く大きなものに成長するよう助けるものでもあります。 しかし、これ程にまでになるとは…その翼は間違いなく、貴方の力の証ですよ。」 私はその時、初めて自分に在るものに気づいた。 「私はこれで何処へ行くんだ?」 「何処へでも。でも、貴方はもう気付いているでしょう?」 誰かの声が更にはっきりと響く。 「貴方の『本体』は此処ではない処に在ります。 今、此処にいる貴方はその本体の一欠片です。」 「なら、此処を飛び立てば私は『元』に戻れるのか。そして、此処からいなくなる。」 「いいえ、貴方自身は何処にも失われません。 貴方の一部分はちゃんと此処に遺って生きてゆきます。 何一つ、無駄にはなりません。 此処にいる誰かの翼の糧にもなるのですから。」 「そうか…」 今が少しずつ、解り始める。 そして、この先のことも。 「縁がある者は貴方の還る処にもいます。此処とは違う形ではありますが。だから別れではありませんよ。」 優しい声は静かに遠くなり、強い光が包み込んでいった。
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