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「あっくんどうしたの?」
・・・ふと気がつくと、いつの間にか背後に彼女が立っていた。
「ああ、おはよう」
窓から顔を出した彼女は怪訝な顔をしながらベランダに降りてくる。
「あっくん、なんか、さっきからずーっとベランダで何かを見ているからどうしたのかなと」
「えっそんなに?」
「うん、私が起きてからボンヤリしている間だから、かれこれ十分ぐらいは見ていたよ」
背後で目を覚ました彼女に気づかず、どうやら私は夢中で指輪を眺めていたようだ。
「・・・ああ、それより・・・」
しかしそんなことはどうでもいい、私は彼女に今しがた発見した指輪の模様を彼女に話したくてしかたがなかった。
この指輪は単なる雑貨ではなくてひょっとしたら文化的に価値があるかもしれない。
幾らで買ったんだ。
指輪のあまりの美しさに気づいた私は、息せき切るように彼女に話したのだが、どうも彼女の反応は鈍かった。
「・・・んー、嬉しいけど・・・」
彼女はどうもこの指輪の美しさを理解できていないみたいだった。
いつしか興奮する私の前で、彼女はいつものようにその垂れた眉をいっそう垂らして困った顔を作っている。
しかし、不思議なことに、いつもは私の中で愛をかき立てるはずのその仕草が、今日に限っては何故かこれ以上無く醜悪で吐き気を催すほどに下品に思えてくるのだった・・・。
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