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龍一の葛藤など一蹴してしまう、美百合の何とも表現できないこの勢い。
「ここでフレンチやイタリアンが出てこないところが、……お前だよな」
龍一は笑いのにじむ唇を拳で隠しながら言う。
美百合は、龍一の絶対唯一のお姫さまだ。
お姫さまにはどうしたって逆らえない。
逆らえないけれど、
「ラーメンが好きか?」
尋ねると、美百合は満面の笑顔になってうなずいた。
畳み掛けるように、
「じゃあ、俺のことは?」
と聞いてやる。
『逆らえない』のと『意地悪』は、また別の問題だ。
美百合は顔に笑顔を浮かべたまま、その頬を引きつらせた。
どうやら龍一がいつもの余裕を取り戻したことに気がついたらしい。
美百合がここで何と答えても、もうラーメン屋なんかには連れていかない。
「食いたかったら俺を食えよ。どこからでもどうぞ」
龍一が浮かべる魅惑の微笑みに、美百合の頬が真っ赤に染まる。
「何を想像したんだ?」
この愛しい美百合の答えがYesでもNoでも、
とりあえず龍一はもう一度、美百合をベッドに押し倒すことに決めていた。
Fin
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