第二章 消えた婚約者

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盛り上がるメンバーたちをよそに、豹磨だけは神妙な面持ちで裏目探偵舎の格子戸を見つめている。 「豹磨さん? どうしました?」 雪の問いかけに豹磨は視線を戻すと表情を変えないまま呟く。 「新たな依頼人がお見えのようです」 その言葉と共に、格子戸がゆっくりと開かれる。 するとそこには、黒縁のメガネをかけたひょろりと長身で黒髪の男が立っていた。 「あの……このチラシを見て来たんですが……こちらは探偵会社なんですよね?」 「はい、ようこそ裏目探偵舎へ!」 すかさず椅子から立った雪が男をカウンターへと導く。 どこを見ても小料理屋にしか見えない作りの事務所に瞳を泳がせながら入って来る男の姿に梨乃は思った。 きっとこの様子は毎回依頼人が来るたびに見る光景になるのだろう。
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