第二章 消えた婚約者

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「こちらにどうぞ」 雪の案内で、カウンターに腰かけた男はスーツのポケットから名刺入れを取り出した。 そしてそこから1枚抜き取ると、カウンターに置いた。 「池内光彦(いけうちみつひこ)と申します。 製薬会社で新薬の開発を担当しております」 池内が置いた名刺を受け取った豹磨も、スーツから名刺入れを取り出し挨拶しながら手渡す。 「裏目探偵舎の総代豹磨と申します。 早速ですが、どのようなご依頼でしょうか?」 「はい……。実は僕の婚約者である、水島瑛梨香(みずしまえりか)という女性が行方不明になってしまいまして……。 彼女の家族が警察に捜索願を提出したのですが、いまだ見つかっていません。彼女が消えて……もうじき1ヶ月になります」 弱々しく眉根を下げながら言った池内の姿に、梨乃は切なさを覚えた。
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