第1章

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それから毎日、俺は仕事帰りにパチンコ屋に通った。 三日に一度くらいは勝つので自然と金が貯まっていく。 土日は競馬場に行き勝負。負けたらそのレースに賭けたことをなかったことにした。 俺の自転車操業は終わりを告げた。 借金はすぐに消えてなくなった。 財布の中は潤い、自然と気持ちも大きくなっていった。 そして俺は狙っていた女性をデートに誘うことにした。 いつもより金に余裕があるので、大判振る舞いするつもりだった。 普段はなかなか行けないような値段の張るレストランに誘うと彼女は喜んで誘いに乗ってくれた。 食事が終わった後、少し一緒に外を歩いていたが彼女はとても楽しそうだった。 それで俺は勘違いしてしまったんだ。 彼女の肩を掴んで、告白してしまった。 そんなつもりはなかったのだけれど勢いでしてしまった。 結果は……。 「ごめんね。あなたのことは友達としか思えないの」 撃沈した。 彼女をタクシーで送り届けた後、その数時間をなかったことにした。 財布に金が戻ってきていた。 そして彼女に電話をかけてみたら、いつも通りの態度だった。 俺の告白はなかったことになったのだ。 俺は失敗しない男になった。 それから金は貯まるし、女には不自由しなくなった。 失敗してもなかったことにしてしまえば、いくらでもアタックできる。 俺にとってこのアプリはなくてはならないものになっていった。
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