episode152 ワインとライム

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あの男に和樹を託してもいいと 思ったことが一度だけある。 船が沈没して死にかけた時だ。 あの状況下でそう決断したのは 愛のためと言うよりも 自分のプライドのためだった。 絶対に守らなければならないものが 自分の中に二つある。 ひとつはこの家で ひとつはプライドだ。 言わば本気じゃなかった。 本気であれをくれてやると思っていたわけじゃない。 小さな男だ。 挙げ句――同情か長年の刷り込み反応で あいつは九条敬を捨て俺を選んだんだからイヤになる。
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