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あの男に和樹を託してもいいと
思ったことが一度だけある。
船が沈没して死にかけた時だ。
あの状況下でそう決断したのは
愛のためと言うよりも
自分のプライドのためだった。
絶対に守らなければならないものが
自分の中に二つある。
ひとつはこの家で
ひとつはプライドだ。
言わば本気じゃなかった。
本気であれをくれてやると思っていたわけじゃない。
小さな男だ。
挙げ句――同情か長年の刷り込み反応で
あいつは九条敬を捨て俺を選んだんだからイヤになる。
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