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それは母からの手紙だった。
拓斗へ。と書かれたシンプルな白い封筒。
俺は何かにすがるような気持ちで中を開けた。
中には二枚の便箋が入っていた。二年ぶりに見る母の筆跡。
――拓斗へ。全然連絡をしてあげれなくてごめんなさい。ちょっと体調を崩してしまって。もしかしたらこのままお別れになってしまうかもしれません。拓ちゃんも全然連絡よこさないけれど、便りがないのは良い知らせよね。きっとあなたのことだから、一人でも立派にやっていけることでしょうね……――
泣きながら読んだ。その後に書かれていることがあまりにもリアル過ぎて、読んでいられなかった。葬式はどこの会社に頼むのか。遺産相続は誰に相談すればいいか。私物はどう処分すればいいのか。
とても、読んでいられなかった。
だが、便箋の最後を読んだ俺は、一筋の光を掴んだような感覚に襲われた。
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