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手術室から医師が姿を現したのはそれから二時間後のことだった。
思っていたより早い退室に、俺は不安な気持ちでソファから立ち上がった。
「か、母さんは!?」
医師はゆっくりとマスクを外す。
マスクの下のその顔は、穏やかな笑顔だった。
「奇跡ですよ。相沢さん」
清々しいほどの笑顔で医師はそう言った。手術室から続々と出てくる他の医師や看護師たちも、一様に笑顔だった。
「あの……手術は」
「いやぁ、びっくりですよ。僕らの見間違いってことはないと思うんですけどねぇ。お腹を開いたら、腫瘍がどこにも見当たらなくてですね……。術前検査じゃはっきり映ってたんですけどねぇ。ご心配をおかけして、本当に申し訳ありませんでした」
「え……じゃ、じゃあ」
「もう、心配ありませんよ。二週間ほど経過を見ますが。すぐに退院できると思います」
俺は膝から崩れ落ちるようにして、安堵の涙を流した。
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