運のご利用は二十歳から

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「こちらが相沢様がお持ちの運資産額でございます」 「このフォルトっていうのは運の単位ですか」 「はい。ローマ神話の幸運の女神フォルトゥナが語源でございます」 「1フォルトって、どれくらい?」 俺が尋ねると神木は困った顔で首を傾げた。 「うーん。そうですねぇ。運の価値は人それぞれですので……」 神木は困った顔のまま俺の運資産額が記載された書類の下部を指し示した。 そこにはQRコードが印刷されていた。 「相沢様。運の利用はどなた様でも無料で始めることができます。まずはこちらからアプリをダウンロードして頂きまして、実際にお使いになってみてはいかがでしょうか」 よくできたドッキリだ。四葉銀行が二十歳の俺に企画したバースデーイベントだと思うことにした。このアプリをダウンロードしたら画面に「二十歳おめでとうございます。現金百万円をプレゼント!」とか出るかもしれない。 俺はもう少し付き合ってみることにした。 ポケットからスマホを取り出してバーコードリーダーを起動させ、QRコードを読み取った。 表示されたURLをタップすると四葉銀行のホームページに飛んだ。 画面には『資産運運用アプリEasyF』の文字が現れる。 ダウンロードボタンをタップするとアプリのインストールが開始された。 「ちなみにですけど、俺の資産額五十万ていうのは、多い方なんですか」 アプリのインストールを待つ間、俺は神木になんとなく質問した。 「申し訳ございませんが、他のお客様のお取引に関する内容はお答えできないことになっておりまして……」 神木は申し訳なさそうに頭を下げた。言われてみればその通りだ。誰がいくら預金しているかなんて、聞いても教えてくれるわけはない。 「こんなのあるなら、もっと早く教えてくれればよかったのにな」 最初に見たチラシに記載されていた「初期残高は二十歳までの素行で決定する」が気になっていた。具体的に何がと言われるとよく分からないが、恐らく二十歳までの行いが良ければ初期残高が増える仕組みだろう。 俺は高校時代、軽い気持ちでタバコを吸って補導されたことがある。それ以外でもバレてはないが酒も飲んだし、無免許で原付乗ったこともある。小さいことだが、俺の残高に響いているんだろうか。 まあ。この話しが全て真実であると仮定した場合だけど。 「ご両親からは伺っていなかったのですか」
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