恋雨傘

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どうなってるんだ? まあ、いいか。 いらなくなった傘を誰かに押しつけたかったんだろう。 普通に考えたら色々とあり得ない出来事だったが、仕事で疲れていたことに加えて、この大雨。 僕は、傘が手には入って良かった、ぐらいに思っていた。 しかし、その傘をよくよく見てみるとやたら鮮やかな赤色。 恥ずかしくないかこれ、と思いつつ、やはり雨から逃げる誘惑には勝てず。 僕は、傘を開いて雨の中に歩き出した。 もう、雨に濡れる心配は無いので急ぐ必要は無い。 すれ違う人たちが、体をぬらしながら焦る姿を横目に、悠々と歩いていると、耳元で声がした。 「初めまして」 女性の声。落ち着いた雰囲気の美しい声だったが、突然の事で僕は思わず傘を地面に落としてしまった。
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