君しかいらない世界

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かくして、私の心うちなど知る由もなく、 藍子は他の一切の男を断ち切る代わりに、相川から今まで以上に愛され、 相川は自分にだけ魅力的に見える恋人を手にいれた。 私はと言えば、二人が恋に没頭するのを見計らって、静かに留学を決めた。 留学のことを伝えると、藍子は泣いて止めてくれた。 藍子と相川は、ますますお互いにのめり込むんだろうなと想像して寂しかったけれど、とても穏やかに笑えたと思う。 そうやって私は、あのキラキラしたものを普通の女に貶めた上、さっさと逃げ去ったのだった。 そのせい、なのだろうか。 日本を離れた後も、私は一向に恋をすることができなかった。 何をするにも藍子の顔がちらついて、 誰かが自分のことを愛してくれることなど一生ないのだと、 意味もないのに、例の指輪をはめたり外したりして弄んだ。 指輪は、私の孤独を表す象徴のようなもので、 同じ指輪でこうも違うなんて、とため息をつくばかりだった。 留学してからも、藍子はたまに連絡をくれたけど、私は簡素な返事しか返さなかったし、 そうしているうちに、卒論や転職活動なんかも始まり、連絡は徐々に途絶えていった。 大学を卒業して、海外で就職して、結局日本に配属されて。 もう藍子は私のことなんか忘れただろうなぁ、なんて思っていたタイミングで、突然藍子から連絡が来た。 なんとも気安い様子で「日本に戻ってきてたなら、なんで教えてくれないのー」とメールが来て、思わず苦笑した。 3年の月日なんて、彼女にかかればなかったことみたいになる。 「会おう」と言われたときは戸惑ったけれど、なんだかんだ藍子に甘い私は断りきれず、 ちょうどいい機会なんだと自分に言い聞かせて、今日の約束にいたった。
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