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「……とまぁ、我が家の妹たちは大体こんな感じだ。ドタバタしてるのは否定しないが、それがまた楽しくもある。そしてそんな毎日が続くよう、俺は今日も勉学に励むのだった……」
「……ねー湖太郎くん? さっきからなに一人でぶつぶつ言ってるの?」
「俺の家族の紹介だよ。どうした? もしかして莉子〈りこ〉も、俺の妹たちの話を聞きたいのか?」
「聞くまでもなく知ってるから大丈夫だよ。それに菜沙奈ちゃんやもずくちゃんとは、買い物の時によく会ったりするからね」
「そういや、蒼空のやつは莉子の話になると途端に警戒心むき出しになるな。なぁ、俺の知らないところであいつとなにかあったりした?」
「……ああ、うん……それに関しては、特になにもないはずなんだけどね。私、知らない間に蒼空ちゃんになにか悪いことしたのかなぁって……実はずっと悩んだりしてて……」
「多分あれだな。その小柄な見た目に似つかわしくない、余計な胸の脂肪が主な原因だと思うぞ」
「ふえっ!? こ、湖太郎くんなに言ってるのっ!? それセクハラだよ!?」
「これはセクハラじゃなくてただのじゃれあいだ」
「そこでじゃれあいとか言われるとますますそれっぽいんだけど……」
「莉子が引っ越してきた中一から数えて、かれこれ俺たちは四年ほどの付き合いになるわけだが、いまだにその手の冗談に弱いんだな。俺はもう莉子をただの友達以上に思ってるのに、セクハラなんて言われたら少し悲しくなるよ」
「た、ただの友達以上? それってどういう……?」
「心を許し合えた家族みたいな関係ってやつかな」
「……」
「あ、そうだ。妹の話してたらすっかり忘れてたけど、今日って英語の宿題の提出日だったよな? 悪い、やったのに家に忘れてきたから、よかったらノート見せてくれない? また近いうち礼するから!」
「……悩ましいです」
「へ?」
「私、湊さん家のお兄ちゃんと妹さんに、ずっと悩ましい思いをさせられ続けています。どうすればいいでしょーか?」
「……」
「……なにか言ってよ湖太郎くん」
「なにか言ってるだろ。このまっすぐな視線から読み取ってくれ」
「ふ、ふえぇ……。は、はじゅかしぃ……」
朝のHR前。クラスメイトであり、そして腐れ縁でもある西宮 莉子〈にしみや りこ〉とのやりとりを楽しむ俺。
周囲からは睨むような視線がいくつも飛んでいたが、理由は未だよくわかっていない。
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