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「湖太郎くん、今からお昼だよね? 私も一緒していい?」
「ああ、もちろんオーケイだ」
「うん、じゃあ失礼するね。……湖太郎くんは今日もお弁当? それって毎日、菜沙奈ちゃんが作ってるんだよね?」
「そうだな。たまに自分で作る時もあるが、大抵は菜沙奈が作ってくれている。俺は朝弱いからな、どうしても菜沙奈に甘えちゃうんだよ」
「湖太郎くんはいいな~、毎日おいしいお弁当を作ってくれる妹さんがいて。夕飯のお買い物だって、いつも栄養考えて選んでるっぽいし……私もあんな妹がほしかったよ」
「莉子は一人っ子なんだっけ? でもそれはそれで、すごく愛されて育ったんじゃないか? 莉子の雰囲気からして、なんかそんな感じだと思うし」
「うーん、あまり深く考えたことはないけど……でもお父さんもお母さんも、私のことすごく大事に思ってくれてるってそう感じるよ。お父さんなんて、私が夕ご飯作った時はいっつも泣いてるから」
「それは愛され指数がメーター振り切ってるな」
「でもそれとは別に、姉妹〈しまい〉か兄弟がほしかったって思っちゃうのも確かかな。湖太郎くんはいつも妹さんたちと一緒だからわからないと思うけど、なんてないことで話したり、言い合ったりするのもやっぱりあこがれの一つではあるからね」
「ふーん、そういうもんか。俺にはよくわからないけど……」
「身近なほど、わからないこともあるんだよ。そういうものだよ」
「そっか……なるほど、そう言われるとそんな気がしないでもないな」
「あ、そうだ湖太郎くん。今日ね、お弁当ではじめて作ってみたおかずがあるんだ。よかったら食べて感想聞かせてもらえる?」
「おう、了解だ」
「はい、それじゃあ……あ~ん」
その目の前に差し出されたおかずを弁当箱の蓋でキャッチする俺を見て、クラスのやつらの殺意メーターが振り切ったように感じたのは多分気のせいだと思う。
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