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「……ここで具材と卵をかき混ぜる、と。そうだ、ここは隠し味でチーズでも入れてみるか。卵とチーズは組み合わせ的に相性抜群に違いないからな」
とある日の休日。
俺は朝からキッチンに立って、目の前に開かれた料理本と必死に格闘していた。
「お? こた兄ぃ、本とにらめっこして一体なにをやってるのだ?」
「見てわからないか? 料理だよ料理。いまちょうど大事なところだから邪魔するなよ」
「料理? でも朝ごはんはさっき食べたばかりじゃないか? もー、ほんとにこた兄ぃは食いしんぼさんだなー。太ってもしらないぞ?」
そう言って、絶えずちょっかいをかけてくる。軽くあしらわれても、全然めげる気配がない。
蒼空の性格はこういう時ばかりは厄介だ。次女というのは構われたい願望があるとよく言うが、作業をしてる時は勘弁願いたい。
「ていうか、いつの間にかめちゃくちゃ距離詰めてんな。手元がくるって頭にかかっても知らないぞ?」
「大丈夫! その時はこた兄ぃにお風呂にいれてもらうから! なので、むしろかけてもらってもわたしは全然……」
「ああ、なら遠慮なくお前に注意の言葉をかけさせてもらうとしよう。次はフライパン使うから向こういってろ」
「(´・ω・`)」
しょぼーん顔になる蒼空。
なんだか面白くないと言ったような感じで、蒼空は少し離れた場所から、変わらずこちらの料理風景を眺めていた。
……我が妹ながら、本当にめげないやつだなこいつは。
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