256人が本棚に入れています
本棚に追加
「で、ここで火を止めて……っと。よし、あとはこのままあら熱を取って……」
「……なーなー、こた兄ぃ」
「ん? なんだ?」
「もしかしてその料理は、こいびとやらに持っていくものなのか?」
「……は?」
いきなりスルーできない単語が聞こえて、蒼空のほうを振り向く。
「最近のこた兄ぃはどこかおかしいとおもっていたんだ……なんかわたしだけあつかい違うし、おまけにつっこみだってきびしい。……だけど、その疑問も今ようやく解けた。そう、つまりこた兄ぃにこいびとができたのだと!」
「その答えが本当に正しいのかどうか、いま一度、自分の胸に聞いてみたほうがいいんじゃないか?」
「え!? 胸に聞くってなんだ!? わたし、胸ないから聞いてもなにもこたえてくれないと思うのだが!?」
自分の平らな胸をペタペタと触る蒼空をスルーして、置いていたフライパンにあらためて目を向ける。
ほどよく時間を無駄にした会話によって、あら熱を取る作業がちょうどタイミングよく終わっていた。
差し箸を手に取り、フライパンの上の卵をひっくり返そうと、神経を集中させたところで――
「ねーにぃに、にぃに」
「……」
まさかの第二陣襲来。
最初のコメントを投稿しよう!