湊さん家の兄と妹たち その1

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「……どうしたもずく? にぃには今ちょっと手が離せないから、蒼空と遊んでいてく……」 「にぃに、いまこいびとがいるの?」 「いません。断じて」 服の袖をひっぱってくるもずくの目を見て、きっぱりとそう言い切る。 「あれ!? どうしてだ!? さっきわたしがきいたときは、まともに返してくれなかったのに!」 「それはまともに訊こうとしなかったお前のせいでもある」 「うむ、言われてみればたしかにそうだ! きびしいお言葉ありがとーございます!」 「そこで礼を言う意味もわからん」 嘆息しつつ、あらためてフライパンに向かう。 中途半端に作業が止まったせいで、集中力が途切れてしまった。深く息を吐き、今一度、手先に神経を集中させる。 すると、また同じ位置で袖が引っ張られた。 「……にぃに、どこにもいったりしない? もずくおいて、どこにもいったりしない?」 「ああ、俺はこれからもずっともずくと一緒だぞ?」 「うん! もずくもにぃにとずっといっしょがいい! もずく、しょうらいにぃにとけっこんするの!」 「そうかー。でもそれだとまず、根本的に法律から変える必要があるかもなー?」 無邪気な笑顔を見せる妹。 すぐ近くから「ほうりつってなんだ?」という声が聞こえてきたが、それに答える前に、声の主はもずくを連れてキッチンから去っていった。 そして今さらだが、どうしてこんな時間に俺が台所に立ってるのかと言うと、それは妹たちに料理を振る舞おうとしたからである。 家族サービスしようと思ったら、その家族にサービスを邪魔されるとは、まさに皮肉としか言いようがない。
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