コハルという赤ん坊

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 何度見回したろう。転生の為の準備の為に私は何度かこの命の中に入り込んでいる。  周りを見たくて寝返りの練習を何度しただろう。  夢中になって頑張ったが、あまりに体がいうことをきかなくてもどかしかったのに、母親の小夜は嬉しそうに私のそんな間抜けな姿を見て「頑張れ」と応援していた。 小夜は私の知らない国の人間だった。  父親は保。あまり家にいなくて、いまのところ会った事がないが小夜が「保の帰りが早ければいいのに」とぼやいている事が多いので、覚えてしまった。  ここには爆撃音がない代わりに、テレビという所から音が聞こえてくる。  私はよく音楽を聞かせてもらうことが多いのだけれど、何を歌っているのか分からない。  一緒に歌おうとしても言葉にならない。  手足だって思うように動かせるようになったのは最近だ。
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